5月20日山に行ったところ、右胸を蚊のようなものに刺された感じがしたそうです。チクチクした感じはずっとあり、最近触ってみると、何かしこりのように硬くなっていてガンでもできたのかと思い、6月10日来院されました。

全体像
右胸部中腋窩線上に腫瘤を認め周囲に発赤がある。腫瘤は弾性軟で、色調は灰色で、圧痛を伴う。

近接近
腫瘤と皮膚の間に黒色の棘のようなものが数本散見された。
よく見ると数本の棘のようにみえる物が動いており、寄生虫の可能性が考えられた。信州大学寄生虫学教室へすぐ連絡をすると、それはマダニの可能性があるのでただちに摘出をした方が良いとの返事であった。局所痲酔下に摘出を試みるが刺し口と思われる箇所が強固に皮膚に固定されていたために周囲の組織と共に摘出した。
切除標本

信州大学医学部寄生虫学教室 内川公人先生からのご報告を掲載させていただきます。
『マダニの種類はシュルツマダニLxodes sulcatusのメスだそうです。この種類はライム病の伝播があるので、1ヶ月以内に咬着部を中心とする遊走性紅斑がくる可能性があるそうです。この標本はかなり大きいようです。この種類のマダニ属に限って交尾をしてから寄生するものと、未交尾のまま寄生して体表でオスの到来を待つものがあるそうです。今回のものは交尾を済ませたものが寄生したものと判断します。このようなメスが長期間寄生しているとライム病を伝播する恐れが大きくなります。』 (内川先生からのメールを要約)
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